試験明け、ようやく迎えた「お疲れ様会」
彼女との5回目のデート。
今回はちょっと特別な意味を持った日でもありました。
彼女は僕と出会った当初から、ある資格試験の勉強を続けていました。
忙しい日々の合間を縫って、仕事終わりや休日に勉強時間を確保し、寝不足のまま過ごしていた日も少なくなかったようです。
「最近、疲れてきちゃって……。でも、あと少しだから頑張るね」
そんなLINEが届くたびに、僕もどこかで見守っていたいような気持ちになっていました。
試験日は、デートの3日前。
彼女がやっと肩の荷を降ろしたこのタイミングで、僕はずっと前から約束していた“お疲れ様会”を開くことにしていたのです。
「今日は、ずっと一緒にいられる」── 特別な1日が始まった
しかもその日は、偶然にも彼女の旦那さんが早朝から夜遅くまで不在の日。
「朝から晩まで一緒にいられるのって、久しぶりだね」
そう言った彼女の声は、いつもより少しだけ軽やかで、嬉しそうでした。
朝、いつもの待ち合わせ場所に車で迎えに行くと、彼女は少しラフな服装で現れました。
ふんわりと巻いた髪、淡いベージュのワンピース、そして小さなピアスが耳元で揺れている。
「そのワンピース、初めて見たかも。似合ってる」
「ふふ、ありがとう。今日はちょっと気合い入れてみたの」
そんなやりとりから始まった、僕たちの一日。
人気店で味わうご当地グルメ── 喜ぶ顔が見たくて
目指したのは、少し離れた街にある有名なご当地グルメのお店。
前から「一度食べてみたい」と彼女が話していた場所です。
予想はしていたけれど、やっぱり行列。
炎天下の中、店の前には10人以上の列ができていました。
「うわぁ、結構並んでるね…ごめんね、こんなに混んでるとは」
「ううん、全然。こんなのもデートって感じで楽しいよ」
そう言って笑う彼女の表情に、僕の方が救われるような気がしました。
45分ほど並んで、ようやく店内へ。
注文していた料理が運ばれてくると、彼女は目を輝かせて――
「……いただきます」
そして一口食べて、すぐに顔を上げて言いました。
「……美味しい♥」
その瞬間、ぱっと花が咲いたような笑顔。
その言葉と表情だけで、並んだ疲れなんて吹き飛んでいきました。
それから彼女は、大事に大事に、一口一口を噛みしめるように食べ進めていきました。
まるで、その美味しさと時間を、できるだけ長く味わいたいかのように。
黙々と、でもとても丁寧に。
そして最後の一口を食べ終えたとき、ふと小さな声でこうつぶやきました。
「あーあ、無くなっちゃった……」
その一言が、なんだか子どものようで可愛らしくて、僕は思わず笑ってしまいました。
“あぁ、本当に連れてきてよかったな”
胸の中に、ふわっとあたたかい気持ちが広がるのを感じた瞬間でした。
「ぽっと胸が温かくなった」── 僕の言葉が届いた瞬間
数日前、「お疲れ様会しようか?」とLINEで伝えた時のこと。
彼女からの返信には、こう書いてありました。
「その言葉、見た瞬間にぽっと胸が温かくなったよ。 なんか、ちゃんと見てもらえてるって感じて、嬉しかった」
文字だけのやりとりなのに、なぜかその言葉は、直接声で聞くよりも深く僕の胸に残りました。
“気遣い”って、こんなふうに誰かの心をほんのりと温めるものなんだなと、初めて実感した瞬間でもありました。
喜ばせたい。ただ、それだけ。
帰りの車の中、彼女は静かに目を閉じていました。
疲れていたのか、少しだけ眠っていたようで。
赤信号で止まったとき、ふと見た横顔がとても穏やかで――少しだけ、涙が出そうになりました。
この人を、もっと笑顔にしてあげたい。
そう思ったんです。
身体だけじゃない。
心も、時間も、ちゃんと分かち合っていたい。
彼女の存在が、どんどん僕の中で「特別」になっていくのを感じた一日でした。