彼女を泣かせてしまった日 ― あの秋の午後のこと
前から気になっていた「彼女夫婦のこと」
僕にはずっと気になっていたことがありました。
彼女は、ある体質を持っています。
実は、子供ができにくい体質で、結婚してから一度も妊娠したことがないそうです。
彼女自身はずっと子供を望んでいました。
しかし、旦那さんはそんな彼女の気持ちを受け止めることもなく、
時間があればパチンコに彼女を連れて行くなど、自分中心の行動ばかり。
子供が欲しいのに授かれない現実、
さらに自分を思いやってくれない旦那さんへの寂しさ。
そうした孤独の積み重ねが、
彼女に「外の誰かに愛されたい」という気持ちを芽生えさせたのかもしれない――
そんなふうに僕は思うことがあります。
それは、彼女夫婦がなぜこれまで子供を作ろうとしなかったのかということ。
彼女は「子供ができにくい体質」だと僕に打ち明けてくれていました。
そして、子供が欲しかった気持ちも僕は知っていました。
夫婦なら営みはあったはずなのに、なぜ…?
旦那さんへの疑問と不満
僕がどうしても引っかかっていたのは、
彼女があれほど望んでいたのに、
なぜ旦那さんはその気持ちに応えようとしなかったのかということです。
正直、僕は彼女の旦那さんをよく思っていませんでした。
彼女が勉強しなければいけない時間にも関わらず、
パチンコ屋に連れて行ったり、
自分の都合ばかり優先するように見えていたからです。
つい出てしまった本音
そんな思いがあふれて、僕は口にしてしまいました。
「だから、旦那さん腹立つんだよなぁ…
Nさんがあれだけ子供を欲しがっていたなら、
不妊治療とか、いくらでも方法があっただろ?
俺だったら絶対そうしたと思う。」
その瞬間、彼女の目から涙がこぼれ落ちました。
彼女の涙と僕の後悔
ハッとしました。
彼女の辛い気持ちを掘り返してしまったのか。
悔しい気持ちを刺激してしまったのか。
僕は慌てて彼女を抱きしめ、
「泣くなよ、俺…Nさんの涙には弱いんだ(笑)。
ごめん、泣かせるつもりじゃなかったんだ。」
と声をかけてなだめました。
幸せなひととき
やがて落ち着きを取り戻した彼女は、
僕の腕枕で少し眠りました。
普段ならありえない、彼女が僕の腕の中で眠る時間。
後から彼女は「あのとき、本当に幸せだった」と教えてくれました。
初めての川原へ
ホテルを出た僕たちは、
初めて会った日に一緒に過ごした川原へ向かいました。
秋風が心地よく、
僕が帰らなければならない時間まで、
二人で寄り添いながら散歩しました。
初めての夜のこと、二人の思い出を少しずつ語り合いながら。
ただ黙ってくっついて座っているだけで、
会話なんていらない、そんな穏やかで温かな時間でした。