家族の誕生日を祝った一日
その日、僕は家族と娘の誕生日を過ごしていました。
朝から部屋には色とりどりの風船やバルーンを飾り、娘は嬉しそうに何度も鏡を覗き込みながら新しい服を着ていました。
外食先では、彼女が大好きなケーキを前に「ふーっ」とローソクの火を吹き消し、その瞬間を逃すまいとシャッターを切る。
笑顔があふれる写真を見返すだけで、僕の胸は温かくなっていきました。
その幸せな時間をFacebookにアップ。
もちろん、彼女も友達としてつながっていることは知っていたから、写真には娘だけを写すように気をつけました。
――彼女が少しでも嫉妬しないように。そう思っていたのです。
彼女は一人、旦那さんは入院中
一方で、彼女は静かな家でひとりきり。
旦那さんは4日前から入院しており、彼女は仕事も休みの日。
テレビの音と冷蔵庫の低い唸り声だけが響く部屋で、長い時間を過ごしていました。
僕が家族と笑っている時間、彼女はその笑顔の写真をスマホの小さな画面で見ていたはずです。
そっけないLINEの返信
夜、自宅に戻り「帰ってきたよ〜♪」とLINEを送ると、返ってきたのは短くそっけない言葉でした。
「無理しなくていいよ」
「私のことは気にしないで」
いつもなら可愛らしい顔文字やスタンプが添えられるのに、その日は文字だけ。
画面の向こうに、彼女の沈んだ表情が浮かんで見えるようでした。
電話の先にあった涙
タバコを買うために立ち寄ったコンビニの駐車場で、僕はつい指を動かし「電話できる?」と送信。
返ってきたのは「無理しなくてもいいよ」。
「そっか」と返すと、数秒後に「声が聞けるなら聞きたい」というメッセージが届きました。
迷わず発信ボタンを押すと、受話器の向こうから聞こえたのは小さな嗚咽。
「……ごめん、泣いちゃって」
理由はすぐにわかりました。Facebookの写真です。
孤独を感じさせてしまった罪悪感
いつもなら旦那さんがいる家に、この日は彼女ひとり。
僕は家族と笑い合っている。
その差が、彼女の心に深い孤独の影を落としてしまったのです。
「私だって子どもがいたらアップしてたもん。泣いちゃってごめんね」
そう謝る彼女に、僕は胸が締めつけられました。
本当は、彼女が謝る必要なんてない。
寂しさに押しつぶされそうなとき、声をかけてやれたらいいのに。
でも、家族がいる以上、それに応えられない瞬間もある。
不倫だからこその制限と、彼女を孤独にさせてしまった罪悪感――
その二つが重なって、駐車場の冷たい夜風の中で、しばらく動けませんでした。
あなたなら、この状況でどうしますか?
大切な人を寂しさから救いたい気持ちと、守るべき日常との間で揺れる瞬間。
もしあなたが同じ立場なら、どんな言葉をかけますか?